* えくすぺりめんと〜れ *












お勉強は嫌いじゃないし得意な方。
だけど実技系はちょっぴり苦手な私。
体育とか、英語のスピーキングとか、
ペアになった相手にはいつも心の中で
「私なんかと組まされちゃってごめん!!」と謝っている…。

そして今日、理科の実験。
教室とはペアの相手が一つずれた結果…。

(私の相手、知念くん!)

背がとんでもなく高くって、
なんとなく不気味なイメージがあって、
あんまり喋ったことないけど
勝手に苦手意識を持っている。

とにかく迷惑はかけないようにしないと…。
説明を一通り聞いて、それでは作業開始してください、
と言われて立ち上がり、先手必勝!とこっちから挨拶。

「知念くん、よろしく……ね?」

真横を見たら、肘。
視線をそろ〜……っと上に移していくと、
「よろしくねぇ」と首が垂直になるような角度で見下ろされた。
ニコリというよりニタリという擬態語が似合うような笑み。
私はそもそも男子と話すのも得意じゃなくて、
特に背が高い人には苦手意識を持ってるくらいなのに…!

「わんは試薬類を取ってこようかねぇ」
「じ、じゃあ私は器具類を集めてくるね」

一つのやり取りを終えて、ほっとひと息。
なんとかなりそう…かな?
とりたえず慎重に自分の担当の物を集めて…と。

それぞれ必要な物を持ち寄って、作業開始。
「まずはこれからだねぇ」と知念くんから率先して作業を開始してくれた。

(……知念くんには机が低すぎてるな)

腰と背中をぐにゃんと曲げた知念くんをこっそり観察する。
器具の上を長い長い指が行ったり来たりする様を見ていたら
(足長蜘蛛みたいだ……)とか思ってしまった。

「おや」
「ん」
「ピンセットがないねぇ」
「あ! 持って来るの忘れちゃった!」

急いで取りに行こうとすると、横から「大丈夫さぁ」の声。

「え?」
「わんは自前のを持ってるからねぇ」

そう言って、ポケットから銀色に光るピンセットを取り出した。

自前ピンセット……?
知念くんって、やっぱり不思議。
でも。

(怖くはない、な)

細長い指でピンセットを操る姿を見て、なぜか和んでいる私がいた。

「ここからは二人作業ばぁ」
「あ、やるやる! えーとこーやって……あれ?」
「こうして、こうさぁ」
「わっありがとう!」

作業方法を指し示す知念くんは丁寧で、
その指先を目で追いながら、

(長い指……手繋いだら、どんな感じなんだろう)

とか考えている私が居て。

(何考えてるんだ!)
「次はこっちばぁ」
「あ、うん!」

顔が赤くなったのバレないように、
顔を真下に向けて手元を覗き込むようにした。
背の高い知念くんからは、見えなかったと思うけど。

チラ、と知念くんを見上げる。
知念くんは私の手元をじっと見ていた。
何となく微笑んでるように見えるけど、
これが地なのかな?と考えながら
そっと自分の手元に視線を戻した。

「私、作業遅くてごめんね」
「そんなことないさぁ」

いつもは謝るのは心の中だけなのに、
直接伝えたのは知念くんの優しさに期待していたから、かもしれない。
期待通りと言おうか、言わされた感なく素な感じで「そんなことない」と答えてくれた知念くん。
まさか、言葉に続きがあるなんて。

「丁寧で助かっているよ」

今度は明確に、微笑んだ。

(怖くない、どころじゃない)

この実習が始まったときとは
違う意味で緊張で高鳴る鼓動を感じて、
このままでは手元が狂ってしまいそうだ、
と思いながら器用な手つきで作業を続ける知念くんを横目で盗み見た。

「化学反応が始まったねぇ」

嬉しそうに笑う知念くんを見ながら
私の体の中ではどんな化学反応が発生しているのだろう、
なんてことを考えながらそっと顔を覆った。
























2023年10月29日のyspyオンリーで頂いた
『知念くんと実験をする夢小説』リク小説でした!
イベント直後に書き始めてはいたんですけど
そのまま半年以上完成を引っ張ってしまい、
せっかくなので誕生日合わせで仕上げました。
茶絵茶絵様、遅くなってすみません…!(遅いどころではない)

うちなーぐちは絶対おかしいんですけど
これが私の限界なので許してください。

タイトルはノリです笑


2023/11/01-2024/06/21