* ささくれ *
パチン パチン
ドライヤーを止めると爪を切っている音が聞こえた。
「夜に爪を切ると親の死に目に会えない」なんていう迷信を
律儀に信じて普段は明るい時間帯に爪を切る秀一郎。
一度だけ、夜、わずかな引っかかりを私が痛がった。
それ以降、秀一郎はこれでもかというほど丁寧に爪を切りそろえるようになった。
深爪ではないかと言うほどに。
ささくれの一つも許さない緻密に。
パチン パチン
(今夜は、もしかしたら)
普段より、少し、丁寧にスキンケアをして洗面所を後にする。
匂わせだけのえちえち。
たまにはこういう短編も良いかなと。
2025/01/07