* THE BLIND GOD -part.11- *












最悪…何やってるの!
私のバカバカバカ!

黙ってるつもりだったのに。
知ってしまったこと。
大石君が、英二のこと好きだって。

私は英二のことをフった。
それだけでも辛かったと思うのに。
それなのに笑顔を作ってくれたのに。


何回も何回も、傷付けちゃったんだ…。



「はぁ…」


息が切れかけて、踊場で立ち止まる。
片手を壁に、片手を膝について呼吸を整える。

登校して階段を上っていく人が私を見てきたけど、
特に何も言ってこなかったしちょっかい出したりもしなかった。

涙を堪えることができたのが、救いだったみたい。



この後、私はどうすればいいの?

誰を想って。誰の為に。誰を犠牲にして。


大石君のこと、スキ。
あんなことがあったあとも普通に接してくれて。

だけど、なんだか疲れちゃった。

あの日喫茶店で、告白現場を目撃したことを伝えたとき。
貴方は、絶対英二には秘密にしてくれ、といったね。
いつも通りに接してやってくれ、って。

いつだって貴方の一番は英二なんだなって、ちょっと悔しかった。


約束守れなくて、ごめんね。
破りたくてやったんじゃないよ。
私がただ馬鹿だっただけ。


元通りになれるの、私達?


分からない。
分からないよ。



英二のこと、大好き。
恋愛感情とは少し違ったけれど。
でも、大好きな友達でいたかった。
こんなの、私の独り善がりかもしれないけど。

沢山傷つけちゃった。
謝っても謝りきれないくらい。


だから逃げ出したの?



戻れない…戻れないよ。

私達、崩れていってしまうの?



私が悪いんだ、全部。

つい口から零れた言葉で、咄嗟にとった行動で、
全てが、壊れて行く。



英二にも。

大石君にも。


ゴメン。




ごめん、ね。






  ****






英二が教室に飛び込んだのを見やった後、
を追って、俺は階段を駆け下りている。

本当は、英二の元へ向かうべきだったのか?
何らかのフォローを入れるべきだったのか?

分からない。
俺には分からない。

ただ、今はもう一つの背中を追ってやらないといけない気がして。


自分の愚かさが痛い。
やはり、あの時英二に想いを伝えたのが間違いだったのかもしれない。
叶うはずがないと分かりながら、どうして伝えた?

今は、もう遅い。
とにかく背中を追うことしか、できない。


俺は、英二の多くを壊しすぎた。
の多くを奪いすぎた。


どこを立てればいいのか分からないまま、
全てを倒してしまった。そんな気持ちだ。



果たしてこの階段の下に、彼女はいるだろうか?
追いついたとして、話してくれるだろうか?
余計崩してしまうなんてこと、ないだろうか?



駄目だ。

考えたら、駄目だ。


いい加減だと言われても仕方がない。

とにかく、謝ろう。



にも。

英二にも。



ごめん。




本当に、ごめんな。





  ****





キライ。
嫌い嫌い嫌い。

みんな、大嫌い。


…嘘。
嘘だよ、そんなの。

素直な感情を受け止められない自分が一番嫌い。

馬鹿。
バカバカバカ。


オレって、世界で一番馬鹿。



「…やっぱり今日帰る」
「うん。無理しないほうがいいよ」

引きとめようとしない不二に、逆に違和感を感じた。
不二の顔を見ると、切なそうな表情をしてた。

「無理しないでね、英二。僕はいつだって英二の味方だから」

それを忘れないで、と。そう言われた。


「オレも。オレも不二のこと大好き」


偽りない、気持ち。
今は不二だけ傍にいてくれればいいって、本当にそう思う。


甘えん坊なオレだから。
誰かに縋っていないと生きていけないんだ。
頼る誰かが必要なんだ。

笑顔を向けてくれた
背中を押してくれた大石。

もう、いない。
オレの隣には、居てくれない。

いや、オレが突き放した?


「仲直りできるかな…」
「それは、英二の心次第でしょ」
「そっか…」


じゃ、無理かも。
なんて思ってる辺りが、駄目なんだと思う。


二人のこと、大好き。
そう笑顔で言い切れなくなってしまった自分が嫌い。



もし、二人が揃ってやってきて、
ごめんねって言ってきたら、オレはどうする?

自分も笑いながら、ごめんって言い返せる?

突き放す?

逃げ出す?


誰が悪かったのか分からない。

向こうに謝られる筋合いがあるのか、自分が謝る理由があるのか。
それすらも分からない。



だけど。


だから。



こんなやつで、ごめんね。




ごめん。






















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2003/08/08