* 温かい飲み物 *
――平成××年9月12日 自宅
リビングにあるテーブルに顎を乗せてぼやく。
「なんか最近胃が痛ぃ~」
「どうしたの、らしくないね」
母にまでそう言われる始末です。
確かに、私といえば腹痛を起こさないことこそが取柄だったのに。
でもね、胃が痛いのって精神的なことが理由なのがほとんどなんだって。
そこでシュウはいつも胃痛で苦しんでことを思い出した。
シュウ、大丈夫かな。
元気にやってるかな……。
「(ぐぁ、余計来たっっ!)」
「ほら」
「?」
悶え苦しむ私の前に、
お母さんはマグカップを置いた。
湯気が立ち上っているそれ。
匂いを嗅いだ。
「何これ…」
「リラックス効果があるって聞いたからさ」
……いい匂い。
嗅いでいるだけで、心が落ち着いてきた。
紅茶のようにティーバッグに入っているそれ。
タグの部分を見てみると、カミリアンティーとドイツ語で書いてある。
英語で言うと、カモミール。
一口そっと啜った。
口内に広がるいい香り。
なんだか、頑張れるかも。
そう思った。
コップを一度テーブルに戻すと、
ゆらゆらと揺れる白い湯気を見た。
camomile、花言葉は“逆境における力”です。
2003/09/19