* adoration -past- *
今日の夕食は
お裾分けのお寿司だけ。
味は全然憶えてない。
あの一瞬の空間
本当は伝えようか迷ったんだ。
でもやめた。
何か居辛い。
席を外すことにする。
不二、どこいくの?
ん、ちょっと星を見に。
英二に訊かれたけど、上手く流した。
暖簾をくぐるとそこは静か。
たまに中から明るい笑い声が聞こえるけれど
それは別の世界のことのよう。
溜息を吐いた。
息が白く立ち上る。
そこまで寒いとは思えないけれど
きっと気温は低いんだろな。
無意識にポケットに入れていた手でそう感じた。
路肩に腰掛けると空を見上げながら息を吐いた。
白い息が霞むと星が見える。
「不二」
「…タカさん」
横に座った。
何しに来たんだろ。
「寒くない?」
「平気」
膝を抱え込みながら答える。
ちょっと嘘だけど。
と思ったとき。
「……、タカさん?」
「なんか、寒そうだったから」
首に回されたマフラー。
温かい。
首を横に倒した。
向こうから言葉が出る前に。
「ちょっとだけ、こうしてて」
向こうは何も言ってこなかった。
完全に体重は預けない けど。
少しだけ 少しだけ。
満月だよって言われたけど
見上げなかった。
見上げても霞んでいただろうし。
ただ一つ
流れるものが気付かれないように。
顔を肩に押し付けて暫く過ごした。
→
微妙にタカ不二風味。
ん、不二タカ??知らん。
やっぱり実話のようです。笑。
2003/10/11