* 諦めないで、負けないから。 -part.14- *
「えっ!?それじゃあテニス部に戻ることになったんだ」
「うん」
部活後、久しぶりに3人での帰り道。会話も弾む。
その話題の中心は勿論勝郎である。
「前みたいにハードな練習には参加できないけどさ。でも、たまにはプレイもしたいな」
「やっぱそうこなくっちゃな!」
本人同様、カツオと堀尾も嬉しそうである。
「あ、ところで…」
「?」
勝郎が突然悲しそうな顔になったのでカツオは覗き込んだ。すると。
「折角の初勝利だったのに、ごめん。一緒に喜んであげる余裕がなくて…」
「そんな、別に良いんだよ!」
手を横に振ってカツオは否定した。
「それより、勝郎君がこうしてテニス部に戻ってきてくれたことの方が嬉しいな!」
「ん…ありがと」
友情っていいものだな、とつくづく思う勝郎であった。
そこに堀尾が入ってくる。
「ちなみにおれは2勝したぜ!テニス歴2年だし」
「桃ちゃん先輩に1ポイントも取れてなかったけど」
「う、うるせー!」
そしてまた、笑い合う。
温かいな、と勝郎は感じた。
みんなが好きだ、と。
テニスが好きだ、と。
久しぶりに心の奥から笑えた気がした。
前より辛い道のりになるかもしれない。
もう純粋に夢だけを追い続けることは出来ない。
でも――それでも。
やっぱりテニスが好きだから。
包み込んでくれるみんなが好きだから。
きっとまたボールを追い始めるのだろう。
***
―――数週間後。
前のようにテニスコートを元気に走り回る勝郎の姿があった。
そう、前のように…。
他の1年がラケットを持ってプレイすることが多くなった中でも、
3年が引退する前と同じようにボール拾いなどを続けているのであった。
それでも、勝郎は満足だった。
大好きなテニスに携わっているだけで。
「加藤、悪い救急箱」
「はい!」
時に看護。
「タオルどーぞ」
「サンキュー」
時にサービス。
「ストップウォッチどこだ?」
「今行きますー」
時に事務。
いうなら、半分マネージャーのような状態であった。
(竜崎先生も、その辺りは心得ている。)
忙しかったが、それなりに楽しんでいた。
そして。
「カチロー」
「あ、リョーマくん」
図書委員会で遅れてきたリョーマ。
ラケットを掲げると、言った。
「アップする。手伝って」
「うんっ!」
嬉しそうに部室へ飛び込むと、
まだあまり使われていないほぼ新品のラケットを持ち出した。
実際にボールを打つことに使われたことは、少ない。
長らく続けていた素振りのお蔭で、グリップは薄汚れていたけれど。
「あんまり方向定まんないかもしないけど…」
はにかみつつ勝郎が言うと、
「別に。丁度いい」
リョーマは第一球を放った。
ぎこちない動きだが、勝郎も打ち返す。
…やっぱり、楽しいや。
勝郎は心のそこからそう感じていた。
「(……あれ?)」
そんな中、勝郎はとあることに気付く。
「リョーマくん…左手?」
「―――」
リョーマは一瞬固まったが、
「回転の都合」
と答えるとそのまま打ち続けた。
しかし、勝郎には分かっていた。
それが照れ隠しであることを。
前は、絶対に左手で打ち合ってくれるなんてこと無かったのに。
右手でもあっさりとやられてしまう自分だったから。
今は…今なんかは、それ以上に下手であることは間違いないのだけれど。
それなのに、リョーマは左手で試合をしてくれている。
頑張っている自分への、敬意なのだろうか。
はっきりとは分からなかった。
でも、とにかく体中を巡る思いのみを信じた。
嬉しかったのだ。
左手で相手をしてくれたということもそうであれば、
今、自分がテニスをしているというその事実が。
何よりも嬉しかったのだ。
「ありがとう」
その言葉に、リョーマは「俺は何も…」と言った。
勝郎は、ううん、と否定した。
「確かにリョーマ君だけってわけでもないけどさ…僕、いろんな人に勇気を貰ったよ!」
左手に掴んだラケットを振りながら。
みんなみんな、ありがとう。
感謝の気持ちを、沢山に乗せて。
――精一杯力を込めたボールが放たれた。
→
終ーわーつーたー!ちかれたでケロー!!(叫)
カチロー総受が書きたい、と思ってたらこんな大作に…!(気絶)
まあ、大変だったけど非常に楽しかったっス。
一応メインCPは荒カティですが、
カツオにいいところはとられ、締めはリョーマだったという。
哀れ、荒井様。(苦笑) といいつつ、
私の中の大目玉は大カチであったりする辺り救われない。(ホントだぜ)
桃カチも悪くないよね、とかほざいてみたり。
最終的にはマネージャーだし。(総受ゆうより逆ハーやん)
乾のようにはなるなよ、と言ってやりたいところだ。(笑)
とにかく念願のカチロー総受小説書けて大満足!
謎CPの癖にかなりの長編連載となってしまいましたが、
読んでくださった方有り難うございました!終結。
2004/06/21