* 月の終わり *

-the end of the moon- part.3












いつも通りの教室。
いつも通りの人々。

でも、オレの心にはぽっかり穴が開いたみたいで――。

「おはよう英二」
「あ、おはよ…」

不二がきた。
とりあえず返事はするけど…。

「……元気ないね」
「………」

不二は、オレの心境にはすぐ気付いたと思う。
でも、今のオレではどうしようも出来ない。

いつもならここで不二に面白い話の一つや二つでもしてやるところなんだけど、
今日はそんな気力も無い。
面白い話なんてそもそもないしね。

「元気だしなよ、英二らしくないな」

不二が元気付けてくれてるのはわかる。
でも、オレは頬杖をついてボーっと窓の外を見るだけ。

鳥が二羽、じゃれあいながら飛んでいる。

「……」

ふぅ、と後ろで不二が溜め息をつくのが聞こえた。

「いつもでも落ち込んでたって仕方ないよ。元気だしな」
「うん…」

一応返事はしたけど、頭は上の空。
あ〜あ…何もやる気起きないや。

「あ、そうそう」
「ん?」
「英二、結局式来なかったじゃん?桃が、
 『オレもちょっと気が滅入ってた。本当にすみませんでした』
 って言ってたよ」

不二はオレの前に回りこんで言った。
ゆっくりとした口調だった。気を使ってくれてるのがわかる。

「そっか、桃…」
「……何かあったの?」
「いや、何も」
「そう」

そういえば、桃にも迷惑かけちゃったんだね。
悪いことしたな。
謝りにいこうかな…。
でも、顔合わせ辛いし…まあいいか。

「ま、元気出しなよ。僕は明るい英二が好きだな」
「ん、ありがと」

すごく気を使ってくれてる。
嬉しい、でも、苦しい。
応えることが出来ないから…。

ダメだな、オレ。
当分立ち直れそうにないや…。


『キーンコーンカーンコーン…』

「あ、チャイム。それじゃ」

不二は、自分の席に戻って行った。

……もう、どうでもいいや。
学校も、何もかも…。


 ***


「菊丸君…菊丸君!」
「え?」
「“え?”じゃないですよ。教科書133Pの初めから読んでください」
「教科書?」

え〜っと…あ、今授業中か。
いつの間にかそんなに経ってたんだ。
ボーっとしてて気付かなかった…。
一時間目は国語か。
教科書はカバンの中だっけな。
今日はちゃんと教科書持って来たよ。
オレよく教科書忘れて、大石に…借りてばっかで……。
何度も言われたな…“明日は持ってこいよ”って。
これからは、もう…借りることは出来ない。
その言葉すら、聞けない……。

「……っ」

また、涙が出そうになった。
オレは、目をぎゅっと瞑って口を一文字に結んで耐えた。

「菊丸君…もしかして、体調悪いんですか?」

体調悪い…そう言われればそうかも。
最近ロクにご飯も食べてないし、昨日もあんま眠れなかったし。

オレは、ゆっくりと何も言わず静かに頷いた。

「そう。それなら保健室に行った方がいいわね。このクラスの保険委員は…」
「一人で…行けます」
「そう?じゃあ気をつけてね」

立ち上がって教室のドアに向かう。
不二の心配そうな顔が見えた。

あ、ホントに体調悪いかも。
足元ふら付くや。

長い廊下には、オレ以外誰もいなかった。
遠くの方まで、一本に続く道。
そこを、一歩一歩ゆっくりと歩く。
教室の中から、みんな不思議そうにこっちを見てる。
そりゃそうだよな、今授業の真っ最中だもん。

歩いていると、3年2組の教室が見えた。
ふと足を止める。
というか、無意識に立ち止まった。

教室の中、一つの開いた机。

上に乗せられた、花瓶と白い花。

「っ…!」


オレは残りの廊下を駆け抜けた。
すごい勢いで階段を駆け下りた。
見たくないものを、見てはいけないものを、見た気がした。


「もう…やだよ……」


保健室に続くシンとした廊下で独りそっと呟いた。

























ふふふ。(怖)
英二さん、疲れてますね…。
あたしも疲れてます。(知るか)

不二さん、結構白い設定なので。
優しいのよ。うふふv(何)
黒不二でも落ち込んでる英二さん見たら優しくなる?
むしろその隙を付け込む?(ぉ
やめよう…こんな話。(汗)


2002/08/17