* skew position -part.12- *
…家に着いて。
少し会話を交わしたりして。
そして気付くと、行為に至っている。
「せん…ぱい…」
「海堂…」
同意の上とは言うものの、
海堂の気持ちは、本当に俺に向いているとは思えなかった。
心が繋がらないのなら、身体だけでも。
そんな気持ちがあったのだろうか。
俺は海堂が好きで。
今日もまた、抱いて。
満足はしているのだけれど。
でも…海堂は本当にそれでいいのだろうか?
「くっ…!」
お互い果てて、白い欲望を吐き出した。
海堂はそのまま動かなかった。
俺は海堂の中から自分自身を抜くと、
壁に凭れ掛かった。
ぼんやりと窓の外を見て。
暗くなり始めた空を見て。
すると、何故か溜め息が出た。
そして、頭の中で一つの考えが纏まっていた。
海堂に、言うべきことがある。
力無く萎えている海堂に、
俺は言った。
「海堂…もう終わりにしないか」
「当たり前だ…。これ以上は身体が持たねぇ」
「その事じゃない」
「…え?」
海堂は身を起こした。
そして不審そうな顔で俺の方を向いた。
身体だけの関係。
やはりそれは、向こうにも自分のためにもならない。
終止符を、打つ時が来たんだ…。
「もう…この関係に区切りをつけないか…」
海堂は一瞬顔をしかめた。
そして、低い声で言った。
「俺のこと…好きだったんじゃないんスか」
「今でも愛しているよ。しかし、未だに君の心は
こっちを向いてくれていないね」
「……」
「俺に君を引き止める資格は無い。帰ってきてくれるなら、
それほど嬉しい事はないけれど。でも、終わりだ。
別れよう、海堂。今日限りだ」
「…けっ」
海堂は、服を着ると、
それじゃ、と一言残し、帰って行った。
少し不機嫌そうな表情だった。
「行った…か」
海堂がいなくなった後、俺は妙な気持ちに浸っていた。
あのままでいれば、海堂と一緒にいられた。
でも、自分から終わらせた。
「海堂が俺の所に帰ってくる確率…8%」
絶望的だな、と自分で笑ってしまった。
全て、知ってたんだ。
海堂が俺の所に来た理由。
海堂の好きな人。
桃城と越前が付き合っているという噂。
全部、知っていたんだよ…。
桃城の気持ちだって。
あの噂が嘘だって事もね…。
…幸か不幸か、俺には判らない。
海堂は、その事を知らないのだろう…。
「皮肉なもんだな、世の中と言うのは」
擦れ違いばかりで、
重なり合うことを知らない。
そんな関係なんだ…。
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越前リョーマ
2002/10/05