* skew position -part.14- *












俺は部室を出ると、
そこら辺を叫んで回ってる桃先輩に後ろから声を掛けた。

「どうしたんスか、桃先輩」
「あ、いたいた!…ってどうしたんスかじゃねぇだろ!
 今日バーガーショップ一緒に寄って帰ろうっつったのお前だろ」
「…そうだっけ」
「このやろ」

何はともあれ、俺達は桃先輩の自転車に二人乗りして
いつものバーガーショップへ向かった。
そのとき、桃先輩が聞いてきた。

「ところで、お前最後まで残って何してたんだ?」
「……部長と話してた」
「え゛…マジ?」
「マジっス」

桃先輩は、俺が部長のことを好きだということは知っている。
前に一回相談したことがあるから。
桃先輩は、部長は止めとけ、と言った。
不二先輩がいるから絶対無理だ、と。
でも、俺は部長のことを諦めることなんて出来なくて。

「それは邪魔しちまったな」
「ほんとっスよ」
「このヤロウ。…で、どうだった?」
「ダメでした」
「やっぱな」

その一言がムッときた。

「…桃先輩が邪魔しなければ上手くいきましたよ」
「なにぃ〜?」

嘘だけど。
本当は、あの重い空気の中から抜け出させてくれて、
ちょっとだけ、感謝してたりする。

でも、そんなことは言わない。

「責任、取ってくれますよね?」

桃先輩の耳元でそう言った。
気色悪ぃことすんなよ、と桃先輩は耳を擦った。


方法なんてどうでも良かったんだ。
どうでもいいからこのむしゃくしゃした気持ちを
どこかにぶつけたかったんだ。


「責任取るって…何すりゃいいんだよ」
「これから、ヤりません?」

キキーッっと急ブレーキが掛かった。
突然のことで俺は驚いたけど、
振り落とされないようにがっしりと桃先輩の肩にしがみ付いた。

「…っ危ないなぁ」
「お前が変なこと言うからだろ!!」

ったく、とか呟きながら桃先輩はまた自転車のペダルを漕ぎ始めた。
そして、なにやら語り始めた。

「いいかー、越前。そういう行為はなぁ、遊びじゃねんだよ。
 本当に愛し合ってるもの同士でやるもんだろ、うん。
 お前も部長のことが好きなんだったら
 そんなことしちゃいけねぇな、いけねぇよ」
「そっか。桃先輩と菊丸先輩みたいに、
 アイシアッテル人たちじゃないといけないんスね」
「……なんだって?」

桃先輩の声色が変わったけど、
俺はそのまま続けた。

「この前見ちゃったんスよね、偶然。
 昼休み、部室に忘れ物取りに行ったら…」

そう。俺は見てしまったんだ。
二人がヤっているところを。

「あれ?でも菊丸先輩って大石先輩と付き合ってなかったっけ?
 なに、桃先輩浮気相手なワケ?」
「分かった風な口聞くな!!」
「……」

突然桃先輩は怒った声を出したので、俺は黙った。
なんだか大変な話になりそうだったから。

「越前…その話は止めようぜ、頼む」

桃先輩は、今回は比較的落ち着いた声で言った。
落ち着いたというか、縋るふうというか。

だから、俺もそれ以上何も言わないことにした。
























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2002/11/01