* skew position -part.15- *
何だかんだいって。
俺は毎日英二のことばかり考えていた。
忘れられるはずがない。
疲れた、とは言ったものの、
俺が英二のことを好きであるという気持ちは変わっていない。
結局、ずっと気にしていた。
やはり、英二との縒りを戻したかった。
俺は…桃に話してみることに決めた。
この前の様子を見ると、
桃は英二と付き合っていたのかもしれない。
そうすると英二が海堂を見ていたのはなんなのだろう、
という疑問に当たるけど、
それは俺の勘違いで本当は桃のことを見ていたのかもしれないし。
桃と海堂は、何だかんだいって近くに居ることが多いからな。
昼休み、俺は2年の教室に言った。
桃は、教室で凄い量のパンを食べていた。
覚悟を決めて、俺は声を掛けた。
「桃!」
「……大石先輩…」
「話がある。ちょっと…来てくれないか?」
**
そういう訳で、俺と桃は屋上へ来た。
人が少ない端の方へ行き、
俺は話を始めた。
「話というのは…分かってるとは思うが、英二のことだ」
「……」
「桃は…英二と付き合っているのか?」
桃は暫く黙っていたけど、
ゆっくりと口を開けると、ハイ、と小さく言った。
やはり…そうだったのか。
予想はしておきながら、俺は心が痛んだ。
英二は、俺と付き合っていたのに。
英二も英二だ。俺と付き合うのが疲れたのなら、
そう言ってくれればいいのに。
「桃、英二とは…同意の上で付き合っているのか」
「…はい。一応……」
いつもとは違い、このときの桃は喋り方がはっきりしなかった。
まるで何かを隠しているかのようで。
とりあえず、俺は気にしないことにして続けた。
「そうか…それならいいんだ。お互いのことが好きでいるなら。
英二のこと…幸せにしてくれるか?」
「…オレには自信がありません」
「え?」
一瞬、意味が分からなかった。
予想とは違う答えが返ってきたものだから。
「オレには自信がないって言ったんス!」
俺は驚きの一点張り。
桃の声は震えていた。
強い声だった、でも崩れそうだった。
「オレはエージ先輩を幸せにする自信がない!
愛し続ける自信もない!」
「なんだ…それは」
「付き合ってはいるけど…オレはエージ先輩のことを愛していない」
「ふざけるな!」
ついカッとなってしまった。
気付けば怒鳴りつけていた。
「ふざけてなんかないっス!本当の…ことなんス。
エージ先輩だってきっと…いや絶対、オレのことを愛してなんかいない!」
「じゃあどうして付き合ってるんだ!」
「それは…それは!!」
桃はそこまで言うと、黙った。
手を強く握ったまま、下を俯いた。
唇を噛んでいた。
下を向いたまま、呟くように話し始めた。
「エージ先輩は…エージ先輩は…」
「英二がどうしたんだ!?」
桃は顔を横にずらした。
「これ以上は…オレの口からは言えないっス」
「何故だ!?」
「どうしても…言うわけにはいかないんです」
そういうと、桃は走って帰ってしまった。
一人残された俺は、
屋上のフェンスに寄りかかると、空を見上げた。
全く、ワケが分からなかった。
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大石秀一郎
2002/11/01