* skew position -part.18- *












「………」

まずいな、大石、意外と勘が鋭いね。
そろそろ気付かれる…かな。
ま、大丈夫だろうケド。

「……フフッ」

僕の本命は、ただ一人。
そして真実を教えたのも、その人だけ。

あのね、大石。
いくら僕だって憎い人を抱いたりなんてしないよ?


そう。

僕の本命は――…。




  ***




「あっ!教室に忘れ物しちゃった!」

部活も終わって、部室で着替えようとしていたとき。

聞こえた君の声。
無意識に反応してしまう。
やっぱり、好きな人だから。

どうってことない話。
普通なら流してしまうところだった。
でも、次の言葉で全てが変わったんだ。

「不二ぃ〜、一緒に取りに来てっ!お願ーい!」

言ってきたのは、ぴょんと撥ねた赤い髪の、
少し幼さが残っている印象を受ける少年。
3年になって同じクラスになった、英二だった。

何しろ、好きな人の頼みだし。
僕はOKすることにした。

「分かった。いいよ」
「やたv」

その瞬間、悪魔が舞い降りた。
何故かいけない考えが浮かんでしまった。

僕は、横に立っていた手塚に一言声を掛けた。
そのころは…僕は手塚に告白されて付き合い始めていたころだった。
手塚のことは、好きだったけど…本命かというと、そうでもなく。

「手塚、ちょっと用事が出来たから先帰ってて」
「分かった」

僕より数歩前を歩いていた英二は、不思議そうに訊いてきた。

「忘れ物取りに行くだけだよ?手塚日誌とか書いてるから間に合うと思うけど」
「いや、久しぶりに英二と帰りたいなと思って…いい?」
「あ、そうにゃんだ。そうだな〜…うん。今日は大石とも約束してないし、いいよ♪」

僕は笑いを返したけど、実は心が痛かった。
いつでも君の考えの中心は、大石なんだって。
少しだけ、悔しかったのかもしれない。

「え〜っと、教科書きょーかしょ…っと。あった!
 じゃあ帰ろ、不二………不二?」

英二はこっちを見ると少し怯えた風な顔をした。
そんなつもりはなかったけど、僕の表情が人を怯えさせるようなものだったのか…。
これからすることを考えて、また恐ろしい笑顔をしていなのかもしれなかった。
自分では、全く覚えが無いのだけれど。

にじり寄る僕に、英二は本能的に後ずさっていた。
僕は歩く速度を速め、英二を捕らえた。
服に手を掛けた。
英二は驚いた表情をした。

「不二…?にゃに…」
「英二…君が好きだよ」
「えっ!?でも、オレ…」
「君が大石と付き合ってるのは知ってる…でも好きなんだ」
「不二…」

切なげな表情をした英二。
あまり抵抗は見せてこなかった。
僕は、英二の両頬に手を添えると、顔を近づけた。

「好きだよ…」
「不……んっ…!」

『大石に汚されるくらいなら、僕が穢してあげる』

「!!」

口を離すと、僕は英二の服のボタンを素早く外した。
立ったままの体制で英二の肩を掴んで、
露になった胸元に舌を這わせた。
英二も初めは僕の手を剥がそうとしていたけど、
力が入らなくなったのか、ただただ甘い吐息が零してた。
少しずつ舌を下に進め、胸の突起も弄くっていった。
赤い痕を残しつつ、丁寧に舐め上げた。

「はぁ…不二っ…」
「ここまできたら最後までやらなきゃ辛いでしょ?」
「や…あっ!」

予想通り、英二のソコは固く大きくなっていた。
優しく撫でていると、英二の膝がガクガク震えたのが分かった。
英二の体を反転させ後ろから抱きかかえるように引き付けると、
あっさりと倒れこんできた。
そのまま英二を僕の膝に座らせるようにして、甘い愛撫を続けた。
ひっきりなしに喘ぎ声が聞こえて、僕の気分も最高だった。

チャックも下ろして、ズボンを脱がした。
直に触れば、英二の熱い体温が伝わってきた。
手に湿った感触が感じられて、感じてくれてることが分かって素直に嬉しかった。
僕は、無我夢中で手の動きを早くした。

「あっあっ、ふ…じ…!もぉ…ダメェ」
「いいよ、手に出しても」
「つ…ぅ、ううっ…!」

手の中に、熱い液体がどろりと注がれてきた。
僕はそれを全て舐め取った。

英二は射精の余韻で朦朧となっていた。
その間に、後ろの穴に指を捩じ込んだ。

「あうっ!?」
「可愛いよ、英二…」
「うっ…ア……」

身じろぎする英二の中を滅茶苦茶に掻き回し、指も増やした。
三本目も優になった頃、
僕は自分のモノを取り出して、躊躇うことなく突き入れた。

「あああっ!あぅ、はあっ!!」
「やっぱり…初めてだとキツイね…」
「っ…不二、やだ、ぁあ!!」

奥まで挿れるのには暫く時間が掛かった。
ミシミシと初めてのものを突き破る快感というものがあった。

「痛っ…あぅ!はぐ…ふじ……っ」
「気持ちイイよ、英二の中」
「ヤダ…!やめて、ふぁぁ…イタイ…っ!」

結合部に血が流れても気にしなかった。
むしろ、快感。

「不二!あっあっも…や…」

ジュポジュポとした音が耳に厭らしく響いた。
だんだん強くなる締め付けに、英二も感じていることが分かった。

「はっんっ…ん!不二…っあ!」
「英二、僕も……っ!」

英二からの強い締め付けが来るとほぼ同時、
僕も英二の中に全てを放った。



  ***




それは確か、2週間ぐらい前のこと。
妙に天気の良い日のことだった。
邪魔する雲が無い空では夕日が良く見えたけれど、
その色が有り得ないほどに真っ赤で、
明日は雨かなーなんて思いながら帰ったのを憶えている。

……あの日以来、僕は英二に避けられてる。
英二は僕とヤったことに対して罪悪感をいだいているのか、
大石にあまり話し掛けなくなった。
ま、僕にも話してくれなくなったけれど。
当然…だけどね。

英二は大石を忘れようとしているのが見てて分かった。
それは微妙に痛々しかったけど、でも、僕としては都合の良い展開。
あそこまで無理に犯しちゃって…縒りを戻すなんてどっちにしろ無理かもしれないけど。
とりあえず、英二と大石仲良くしているのを見てて辛くなる、ということはなくなった。

それでもたまに、英二は大石が愛しそうな顔をする。
英二と大石が接近しそうになる度、
僕は英二の耳元で囁いた。

『この前のこと、大石に知られていいの?』

英二は途端青褪めた。

忘れようとしているのは明らかなのに。
それでも嫌われたくないなんて、我が侭だな、英二は。
…と思ったけど、一番我が侭なのは、僕かな、と思って苦笑した。

まるで子供みたい。
欲しいものは、どうしても手に入れたい。
何をしたって、手に入れたい。

結果的に、自分の首を絞めるような方法だったって……。
























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2002/12/17