* skew position -part.4- *












…なんてことだ。


昨日、意識が朦朧としたまま家に帰ってしまった。
すると忘れ物をしていた。
そのことに気付き、朝一に部室へ来てみれば。

何故か、誰もいないはずの部室から声が聞こえて。
そっと、窓から覗いて見た。
するとなんと…

手塚と不二が、キスをしていた。


俺は必死に自分を落ち着かせようとした。
でも、動揺は止まらない。

信じられなかった。
二人が、そういう関係だった…?


いけないと思いながらも、
俺は息を潜めてドアの前に立った。
話し声が、聞こえる。

「…昨日大石から相談をされた」

…俺の、ことか。
それはそうだな。
二人がそんな関係なのだったら…
昨日不二が俺に言ってきたことは、大問題だ。

その後の暫くの会話は、
小声だったのか雨音のせいか聞き取れなかった。
唾を飲み込むと、手塚の珍しく大きな声。

「本当なのか!?」

…口論になっているのか。
手塚に、相談しなければ良かったのか…。
何も知らなかったとはいえ、悪いことをした。
しかし、不二は一体何を考えているんだ。


「なんてお前はふしだらなんだ」
「…そぉ?」

比較的穏やかな声が小さくだが聞こえた。
もう俺は我を忘れて部室のドアに耳を当てて聞いていた。

確かに小さい声だった。
雨粒に遮られていた。
でも、確かに手塚はそう言った。


『お前はこの前菊丸を抱いたと聞いた』


「―――」

俺は、もう頭の中が真っ黒になった。
目の前に闇が広がるような感触さえした。

その後の会話は、頭に残っていない。
とりあえず、不二は否定していなかったような気がする。

どうしてそのような展開になったかはわからないが、
チラッと窓から中の様子を覗くと、
手塚が不二の学生服を脱がしに掛かっていた。

その段階で俺は目眩がして、
重い足取りでその場を去った。


…わからなかった。

英二も、海堂も。
不二も、手塚も。


何もかも、わからなくなった……。
























next character→大石秀一郎


2002/09/16