* THE BLIND GOD -part.6- *
オレがにフラれてから、3日目の部活。
いつも通りの部活…のはず。
だけどなんだかとても静かな気がする。
ううん、みんなはいつも通りだ。
ただ、オレの周りだけ。
一昨日あんなことがあって…オレがちょっと沈み気味だからかな?
こうしてみるとオレがいつもどれだけ五月蝿かったか分かる。
でもそれだけじゃないような。
オレが沈んでるときは、必ず声をかけてくれる人が居る。
大石。
大石も…元気ない?
昨日から溜め息吐いてる姿を何度も居た。
無意識かもしれないけど、立つときにお腹抱えるようにしてるし。
胃痛発生かにゃ?
うーん…。飛びついちゃえっ。
「おーいしっ」
「…英二」
「どうしたの、昨日から元気ないじゃん?」
言うと大石は苦笑いをした。
首の周りに絡みついたオレの腕を解きながら。
「それは英二もだろ」
「あ、バレてる?」
にゃははーと笑って見せたけど、
大石は固い表情のままだった。
「英二」
「ん、にゃに?」
一回瞼を伏せてからこっちを向きなおすと、言ってきた。
「今日、ちょっと残ってくれ」
残ってくれ?
残ってくれないか、じゃなくて?
別に用事はないからいいんだけど。
こんな切羽詰った大石なんて…珍しいの。
**
そんな訳で部活後。
オレはベンチに座ってみんなが帰るのを待つ。
大石は既に部誌を書き始めてる。なんか忙しそう。
「エージ先輩、今日帰りにバーガーどうっスか?」
「あー、ごめん。今日は先約」
「そうっスか。じゃ、お先っス」
「また明日」
みんな帰っていく。
それぞれの世界へ。
オレはこれから、どうするんだろうなぁ。
……失恋って、想像以上に辛いや。
「英二」
「ほ?」
ぼーっとしているうちに、随分と時が経っていたみたいだ。
ぐるりと見回すと、部室の中はオレと大石だけ。
「最近元気ないけど、なんかあったのか?」
「ヒミツ」
「……」
素早く切り返すと、大石は無言になった。
だけど、オレにだって言いたくないことぐらいあるんだーい。
「まあ、言いたくないことなら無理に訊こうとはしないけど」
大石は渋い表情をしながら言った。
…やっぱり最近大石、無理してる。
なんか抱え込んでるよ。絶対。
「そういう大石こそなんなのさ」
「――」
部誌を書き終えたらしくパタンと閉じた大石。
オレの質問に対して、目を大きく開けたまま固まっていた。
「人には訊いておきながら自分は教えないなんて不公平じゃん?」
オレはケタケタと笑った。
そういう自分も結局のところ答えてないからこんなこと言う権利無いんだけど。
でも大石ってこういう風にいうと大抵答えてくれるんだもん。
「実は…昨日また告白されてね」
「……フったんだ?」
訊き返したら、大石は無言だったけど。
でもそれは即ち肯定ってこと。
大石が告白されたことあるの何度か知ってるけど、
OK出したことは一度もないもん。
それにしても変だな。
告白されて、断って。
大石は人の気持ちとかよく組み込める人だから、
人をフったとき自分も辛い気持ちになるんだと思う。
でも、そんなこと今回が初めてじゃないのに。
こんなに元気ないのは久しぶりだ。
他に何か理由があるのかな?
立ち上がって帰りの準備を始める大石。
なんとなく空気がピリピリしてる。
それを和ますために、オレは話を始めた。
「ま、そういうこともあるよにゃ!ところで、どんな子だった?可愛い子??
実はさ、オレついこの間フラれちゃってさー」
勢いに乗っていらんことまでバラしちゃったし。
…ってちょっと待てよ?
確か、が大石のこと好きだとか言ってなかった?
万が一だけど…でもタイミング良すぎじゃない!?
オレが自分の発言を呪った。
その後、もう一つの理由で後悔することになる。
『ダン!』
「―――」
オレはベンチに座ってて。
それを覆い被せるように、大石が手を壁に突いてきて。
何、何々?
これってどういうこと??
よく分からないんだけど…。
「英二」
「………」
冷や汗がつぅと伝った。
嫌な感じがする。
一瞬ぶるっと全身が震えた。
「俺が好きなのは」
ヤダ。
言わないでよ。
「俺が好きなのは、英二なんだよ……」
ヤメテ。
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→Syuichiro Oishi
2003/07/06