* THE BLIND GOD -part.7- *
何をしているんだ、俺は?
俺の腕の下には少し怯えた表情の英二が居て。
何も言えずに小さくなっている。
『俺が好きなのは、英二だよ』
この想いは、言葉に出すはずはなかったのに。
なのに、抑えられなかった。
冷静だとか、しっかりしているだとか。
俺は他人にそのように見られているみたいだけど、
たまには感情に流されてしまうことぐらい、ある。
長い沈黙。
言うはずはなかった。
言うはずはなかったのに。
英二がのことを好きなのは知ってた。
嬉しそうに今日クラスであったことを報告する英二。
その中には、いつもという名前があった。
自分のこの想いは、実るはずがないと分かっていた。
ならせめて、英二に幸せになってほしいと思った。
それが昨日の朝。
突然の告白。
まさかこんなことになっているだなんて思わなくて。
一周ぐるりと廻っている三角関係。
普通ならこんなこと有り得ないのにな、と苦笑いするしかない。
そんな歪んだ笑いをした俺。
英二は、少し震えた声で言ってきた。
「何言ってんの大石、オレ達男同士で…!」
目の端に涙が見える。
こうさせたのは俺なんだと、
やはり苦笑いするしかない。
すっと壁に着いた手を離して。
体を起こしながら言った。
「間違ってるのは分かってる。でも…」
好きなんだ。とは、
言うか迷った挙げ句、やめた。
ベンチでボーっと座り尽くしている英二。
俺はなるたけの明るい声で言った。
「ごめん。俺の言ったことは気にしなくて良いから。帰ろう」
気にしなくて良いなどといっても、
気にするなというほうが難しい。
分かっていながらそう言うしかないほどに追い詰められている状況に溜め息を吐いた。
溜め息と苦笑いが嫌に多い日だった。
そのときの俺は、余りに動揺していて。
平静を装っていたけど、他を気遣う余裕なんてなくて。
だから、窓の外の人影と
走り去っていく足音には気付かなかった。
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2003/07/06