* THE BLIND GOD -part.8- *












嘘だ。


嘘だうそだウソだっ!!





心の中で何回も叫びながら走り抜けた学校裏。
校舎の横をすり抜けて。
正門に着いたとき、切れ掛けた息と交じって飛び出した言葉。


「嘘だ……っ」


ううん、現実だよ。
自分に向かってそう心の中で言ったけど納得がつかなかった。


「―――」


空を見上げた。
最近は日が伸びてきたとは言え、さすがに7時も近くなると夕陽は沈んでいく。

上に広がる薄い水色。
西には橙色の切れ端。
小さく輝く一番星。

それを気にする余裕もなく、私は門を駆け出し駅まで走った。







薄々気付いてた。
もしかしたら、って思ってた。

でも本当にそうだったなんて。


「好きだったの、英二だったんだね…」


大石君。

名前を思い起こすだけで。
顔を思い浮かべるだけで。
涙が滲み出てくる。止まらない。


返そうと思って手に持っていたハンカチ。
アイロンも掛けられて綺麗にたたまれていたのに。
力を入れて握り締めたがためにすっかり皺くちゃ。

また洗い治せばいいや。
そう思って、再びハンカチを目に当てた。


デジャ・ヴとはまた違うけれど。
でも、こんなこと前にもあったなぁ…。
そう思うと、涙を流しながらも笑ってしまった。

笑いすぎると涙が出てくる。
泣きすぎると笑いたくなる。
自分の癖を一つ見つけてまた笑った。



フラれたって、そんなすぐには嫌いになれない。
諦めたとしても、好きって気持ちは変わらない。
その気持ちをも押し込めて、生活していくつもりだったのに。

「泣かしてくれるなよ…」

呟いた声が余りの涙声で。
情けなさで余計泣きたくなった。

だけど、斜め上を見上げて沢山瞬きして。
弱い自分とはサヨナラしようと思った。



泣くと少し心がスッキリする。
全部流してくれる気がするんだ。


だけど、貴方のことで泣くのは、もう疲れた。






















Next criminal→Syuichiro Oishi


2003/07/08