* 鳥ハ自由ヲ求メテ空ヲ飛ブ *
「好きなんだよ、大石…」
沈黙があまりに痛くて、自分から口を開いた。
本当だね。
一度言ってしまうと、心が軽い。
あんなに躊躇われた言葉、繰り返してしまう。
「それって、つまり…」
「友達としてじゃないんだ」
不安そうに訊いてくる大石。
もう知らない。
全部伝える。
「パートナーとしてでもない。部活仲間としてでもない」
全てが零れてく。
「同性だって、分かってるけど。間違ってるって、分かってるけど」
途切れ途切れの言葉のその先。
「好きなんだよぉ、大石……っ!」
これがたった一つの、真実。
どんな言葉が返ってくるか。
そもそも返事が返ってくるか。
無言で立ち去られるかもしれない。
二度と帰ってきてはくれないかもしれない。
ぐるぐると巡る思いの中、ぎゅっと固く目を閉じて待った。
それを解いたのは、驚くほどに優しい温もり。
「おお、いし……?」
「それだけのために、こんな無理をしたのか?」
「それだけ、って…そんな……」
戸惑うオレに対して、大石はずっと笑顔で居た。
優しい笑顔。
「俺も、同じ気持ちだよ」
一瞬理解に苦しんだ。
間抜けな声まで出た。
「はぁー…?」
「はぁ、じゃなくて…」
オレの態度に大石は苦笑した。
でも…つまり、そういうこと?
もしかして、もしかしてさ。
そういうことだったワケ?
「もう一回確認。つまり、どういうこと?」
「大石秀一郎の好きな人は菊丸英二だってことです」
はっきりとした口調でそう言われた。
何。
何さ。
オレ達両想いだったわけ?
なのにオレってこんなに苦しんでたの?
バカみたい。
いや、違うよ。
余計苦しいよ。
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2003/10/16