* 鳥ハ自由ヲ求メテ空ヲ飛ブ *
両想いだって分かっても。
ちょっとした苦しみからは抜け出せても。
もっと大きな苦しみがある。
「こんなことしなきゃ良かったのかな」
全身の傷を見回す。
骨折り損ってやつ?
参ったねこりゃ。
いや、だけどさ。
苦しいのはそんな理由じゃない。
「どちらにしろ…自分の命を投げるのは良くないことだよ」
半分説教も入っているような、大人びた大石の言葉。
何も分かってない。
分かっちゃいないよ、大石。
「でも…だってさ、このままじゃお互い間違ってるみたいじゃん!」
張り上げた声。
勢い付いて体を急激に動かしてしまった。
痛い。
疼く傷。
骨が軋む。
筋肉が唸る。
傷が……イタイ。
「うっ…!」
「大丈夫か、英二!」
体を支えてくれる大石。
オレは暫く下を向いたままで居た。
痛みが止むのを待って。
心が落ち着くのを待って。
一回深呼吸。
ゆっくりと、顔を上げた。
「ね、大石。屋上行こ?」
大石は顔を顰めたけど、どうしても、というと
オレを車椅子に移してくれた。
科の受け付けの前を通って、オレ達はエレベーターに乗った。
そして、開けた世界へと向かう。
開けた世界へ。
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2003/10/16